展示概要

会期
- ※休廊日:月・木
時間
(最終日は16:00まで)

オープニング・レセプション
2019年11月2日[土]16:00〜

 

「…タマゴまで」

2001年以降、海岸で採取した流木を素材に、私は「タマゴのような何か」を様々に作品化してきましたが、徐々に個々の作品や全体構成が変化し、地上に生えるような作品や、垂れ下がる作品も生まれました。最近はタマゴを原型とした形が、それとは識別困難な存在になり、素材や表現方法も拡大多様化してきました。

また、時間の経過と共に人の感性や思考も変化しますが、私にとって、今までは見えなかった世界や人間の業や限界に感応し驚く不思議や、一個の生命体として様々な事象に対して謙虚な諦念に似た自覚が芽生え始めました。それは加齢による錯覚かも知れませんが、自然の移ろいの無常や人間関係の機微に一喜一憂する傾向も、現実に迫ってきた自身の死に対する何らかの意識とも思えます。寛容と沈静かと思うー方で、勘違いと我儘が顕著になり、喜怒哀楽の感情抑制ができない自分も露わになってきました。

そのような変化の中、制作意識をあらためてリセットし、世界の過去現在末来を思い描き、タマゴに向かう思考感覚を再構築すること。清濁併せたイメージの孵化に至る養分として、未知の世界の生成を感じる緩いタマゴを意識するようになりました。

そして、古い金属工具類を研磨して造った作品「METALEGG」が生まれてきました。
流木作品との共通点は、本来の存在の意味が失われたモノとして、経年変化による物の特性・用途性(手垢)を消去して、時間をかけて造り込むことで、新たな存在に変容させることです。また、流木が樹木だった時間や、古い金属工具類がその用途性を発揮していた際に、周囲にあった情景を夢(例:METALDREAM)としての文章表現も少しずつ展開させました。

また、今年から板材の流木を船や筏に見立てて、その上に流木や金槌の柄を彫刻した「ヒ卜ガタマゴ(コマッタマゴとソッタマゴ)」を乗せ、人類という非常に困った存在も含めて、生命の出現から消滅までの旅を何処かに向かって漂流するような設定で構成しました。

今年後半には、コマッタマゴ・ソッタマゴの漂流や航海から連想して生まれてきた、切り落とした各種流木の細枝を寄せ集めて造った「マゼラン」も初公開です。
「タマゴのような何か」は、見る人の生命に関わる意識や思考を経て、現前する直感や認識によって織りなされる生滅のイメージを促します。私自身が家族・知人の生死、自然の恩恵や脅威、様々な事象変化を体感し、人間や世界の不条理と滑稽、無知と無理解、ほんの束の間の歓喜と感動を経験して来た蓄積を、生滅の循環イメージとして作品制作を継続するように…。

(文・勝田徳朗)

出展作家

勝田徳朗

アクセス

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