展示概要

会期
- ※休廊日:月・木
時間
(最終日は16:00まで)

ことばは、そしてあらゆる事象やものごとも、ひとつだけの限定的な意味を持っているわけではない。それらは自ずから多義性を持っており、多義的なままに3次元的な構造を持っている。

一般的な意味での伝達ということにおいては、それが何を指しているかというレベルでの共通認識が必要であることは疑いようもないことではある。それの指し示すものごとを一対一で対応させることによってそこで初めて名称や意味が生まれるのであるし、その対応精度を高め、共有率を上げることによって表層的(実用的)には意味が正確に用を成すことになる。
しかしそれでは正確であろうとするほど、精密に一対一で対応することばを際限なく生み続けることになり、その行先は固定的な対応関係が散らかりながら結果的に、総体的に無意味さを堆積させていくということになる。(それはそれで芸術として成立するかもしれないが)
畢意、私たちはことばと意味とものごとの相互関係をひたすら平面的に広げていくだけではなく、限られたエリアに立体的に重層性を持ってそれらを構築せざるを得ない(とはいえそれは建築的な整合性、合理的秩序を持たない)。しかしてそれに対して誠実であろうとすればするほど複雑に多義性を含み、厳密な一点に収束するように向かいながらも同時に広がりを持つものとなる。

多義的なままに重層的に集積され構造されるものにおいては、それをどの層のどの位置のどの向きのものとして捉えるかで、対象とするものの意味はもちろんのこと、それの全体の様態をも変えてしまう。ちょっとしたこと、ほんの僅かな変化や微細な要素の微かな揺らぎが、構造的にも意味的にも大きく影響し、表層的には同じように見えるものであっても、時には正反対ともいえるような意味や感覚、存在を表出する。
それらの意味・感覚が相互にかかわりあう成り立ちの複雑さは、3次元的に交差する中で互いに影響し干渉しあいながら包括しあうような入れ子状態の相互性によって、感覚が定位されないまま静謐に劇的な化学反応を起こしながら自らを造形している。その内部では互いの軋轢(あるいはぎこちない融合)によって歪められた意味や、それらが表しようとしているものへの囚われと抗いを行き来しながら、しかしそれゆえに新たな地点に辿り着く(かもしれない)ことの不安の稜線ギリギリを探り歩くような感覚が渦巻いているだろう。

そういった成り立ちの、多義性に富むが故の総体としての曖味さという実存。それこそがこの世界の在り様そのものではないだろうか。その中にあって表現することとは、それらを微細な振動を伴いながら浸潤するように透過する行為を経て、そこに埋もれているもののわずかな輪郭を描き出すことだと言えよう。
だからこそ、なにかひとつのことを深く探り進むことの先には、その世界の全体を貫き捉え得るものが出現する可能性が待っている。

出展作家

有賀和郎・飯盛雅子・宇野和幸

有賀 和郎 / ARIGA Kazuo

1951年東京生まれ
2024年第46回『墨展』好文画廊
製絵と、三浦一壮 (ダンス)・大串孝二(装置、音)とのコラボでボイス(作曲と即興)で参加
2023年「個展 祈られた場~夢」ギャラリー檜
2022年「ふうふ展」夢の庭画廊
2021年「個展 心の発酵と祈り」ギャラリー檜

他に企画展数回、個展(作曲展含む)を東京・ベルリンで19回、グループ展を東京・ニューヨーク・ベルリン・ベルギー・アルメニアで発表。
画集「内的な庭」(文:フジ子・ヘミング、石川翠)を発刊。
日本美術家連盟会員、日本作曲家協議会元会員。

夢の場は、心の中で永く思われ続けたと感じられ、発酵し祈られた場であると捉えている。発酵したものでは、食品なども含め不思議な元々の自然にはない何か切実な場を生んでいる。そこには脳での何かしら根源的な機序があると感覚され興味深い。
なので出来上がった夢の気配は多義性がある。そこには見知らぬ不思議な彼岸性がある。その気配は切ないが掴みにくく表出が難しく、映像、写真、作曲、即興の方法もとっている。表出もある意味、多義的である。

飯盛雅子 / IIMORI masako

1959年東京生まれ
早稲田大学卒

1988年の岡本信治郎の世界「東京少年」(新潟市美術館)参加を機に、デジタルデータを用いてデジタルプリント・映像インスタレーション作品を制作。

近年の主な展覧会

2024年「デジタル版画展」ギャラリー住吉橋(大阪)、O美術館(東京)
2023年「デジタル版画展」ギャラリー住吉橋(大阪)、O美術館(東京)
2022年「デジタル版画展」O美術館(東京)
「未景2022 〜ものがたるものがたり〜 」御寺泉涌寺(京都)
個展「遠い光の感触」ストライプハウスギャラリー(東京)
2021年「デジタル版画展」O美術館(東京)
「未景2021 〜あかるい水になるように〜 」御寺泉涌寺(京都)
第16回鎌倉芸術祭参加「甘露 -Kanro・水をめぐる映像の物語-」浄智寺茶室(鎌倉)
2020年「デジタル版画展」O美術館(東京)
「未景2020 〜手のひらのしずく〜 」御寺泉涌寺(京都)、他
個展「響きあうイメージもう一つの域へ」ストライプハウスギャラリー(東京)

 

宇野和幸 / UNO Kazuyuki

1960年千葉生まれ
東京藝術大学大学院美術研究科 博士後期課程満期退学

近年の主な展覧会

2024年「表層の冒険〜抽象のイコノクリティック」 ギャラリー鴻(東京)
「U know they mean2024 -ものがたりの淵源-」Steps Gallery(東京)「デジタル版画展2024 -更新する版-」O美術館(東京)
「日韓芸術通 vol.9 -カッカプコ モルダ モルゴ カッカプダ(近くて遠い、遠くて近い)-」
「SAEM -偶然出会ったあなたの世界-」仁寺アートセンター、清州教育大学美術館(韓国)
「東京展EYESファイナル〜」東京都美術館(東京)、他
2023年「個展」巷房(東京)
第50回現代アーティストセンター展 -ビジュツ、行動せよ!-」東京都美術館(東京)
「線が触覚を触発する」「色が感覚を拡張する」ギャラリー睦・ギャラリーわらね(千葉)
「第10回清州国際現代美術展」Schema美術館(韓国)、他

アクセス

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